分子生物学教室 

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 1.大麻草由来成分をリード化合物とした抗動脈硬化薬の創製
大麻は古くから知られる薬用植物であり、多彩な薬理作用を有する。これまで大麻は乱用の観点から注目されてきたが、アメリカ、カナダなどの諸外国ではその有用成分が注目され、医療用大麻として医薬品の地位を確立している。大麻草にはカンナビノイドと総称される特異成分が60種以上含まれるが、成分と共に薬効が確認されたものはテトラヒドロカンナビノール(THC) を含め数種のみで、カンナビノイド医薬品の開発は進んでいないのが現状である。我々は、大麻草が鎮痛を目的とした貼り薬として使用されていたことをヒントに、大麻草中に含まれる有用成分のスクリーニングならびにこれに続き候補化合物の合成・誘導体研究を行ってきた。
その結果、発痛・炎症反応に関与するシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2) の阻害成分としてカンナビジール酸を見出し 、同様のアラキドン酸カスケード酵素であるリポキシゲナーゼ(LOX) の阻害成分としてカンナビジオール(CBD) を見出した。さらに、化学合成したCBDの誘導体の中から、15-LOX阻害選択性(IC50値=280 nM)を示すCBDのジメチル化体(CBDD) を見出した。15-LOXは、LOXの幾つかの分子種のひとつで、低密度リポタンパク質(LDL) の酸化修飾に関与し、このLDLの酸化(酸化型LDL) が動脈硬化発症の引き金となることが知られている。動脈硬化を基盤とする病気は二大国民病のひとつであり、本研究では、大麻草中の成分由来のCBDDをリード化合物に、15-LOXをターゲットとした新規の動脈硬化治療薬の創製・開発を目指す。本研究は北陸大・薬学部・渡辺和人教授との共同研究である。

 2.新規の抗緑膿菌薬創製のための基盤づくり
緑膿菌はそれ自体では病原性は低くが、気管支肺炎などで好中球による攻撃が十分に望めない患者で感染することが多い。特に、呼吸器の緑膿菌感染は産生される毒素により肺組織が破壊され重篤化しやすい。この毒素ピオシアニンは、特に、嚢胞性線維症における肺への感染中に、多く産生される。したがって、ピオシアニンの発現調節を解明することは、宿主への感染メカニズムを理解する上で重要である。我々は、現在、転写因子FFRPタンパク質群(Feast/Famine Regulatory Proteins)によるピオシアニン産生が関与する緑膿菌クロラムセンシングの新たな発現制御機構の解析を行っている。その結果は、緑膿菌の病原性発現機構の理解の基礎を与えるとともに、新規の抗緑膿菌薬に対する創薬の基盤を与えるものと期待される。本研究は産業総合技術研究所・鈴木理研究室との共同研究である。

 3.糖尿病腎症の原因解明(SNP解析)
現在、日本では20万人以上の患者さんが腎不全のために透析治療を受けていて、さらに毎年3万人以上が新たに透析治療を導入されています。糖尿病性腎症は、この新たに透析導入される患者さんの中で最も多い原因で、有効な治療法や予防法が確立していないために、その患者数は急激に増加しています。残念ながら今までのところその正確な発症メカニズムは解明されていません。一方、今までの研究結果から、糖尿病になっても腎症になりやすい人とそうでない人がいることが分かってきました。そこでこの違いがどのようにして起こるのかを、新しい研究手法であるSNP解析により調べることが、糖尿病性腎症の治療法および予防法開発の突破口になると期待されています。私たちは、糖尿病性腎症の患者さんと、糖尿病でありながら腎症になっていない患者さんのデータを解析することで、糖尿病性腎症の発症メカニズムを解明し、新たな治療法や予防法の開発につなげることを目指しています。本研究は福岡大学医学部第一内科教室・眼科学教室および九州大学大学院薬学研究院医療薬科学専攻臨床薬学講座薬剤学分野との共同研究である。


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