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【一薬の魅力⑲西日本唯一の漢方薬学科〈6〉】精神疾患にも効く漢方薬 イライラなどを抑える「抑肝散」を紹介 「漢方薬理学」の講義が行われました

 第一薬科大学は西日本で唯一、漢方薬学科がある大学です。今回は薬学部漢方薬学科3年を対象にした「漢方薬理学」の講義を紹介。学生らはイライラや神経の高ぶりを抑える効果があるという漢方薬「抑肝散(ヨクカンサン)」について学びました。(写真下に続きます)

 西洋薬のうち、向精神薬や抗精神病薬、抗うつ薬は危険な副作用が出る可能性があるため、小児には使いづらいそうです。そこで役に立つのが漢方薬。この講義を担当する小川鶴洋講師が「漢方薬が得意とする精神・神経疾患」について説明しました。

 このうち「抑肝散」は、小児の夜泣きや癇癪(かんしゃく)、認知症患者、怒りやすくなる人、うつ病患者の不安な状況、不眠症にも効果を示すそうです。

 精神安定作用などがある「釣藤鈎(チョウトウコウ)」や、血の巡りを良くする「当帰(トウキ)」、精神疾患によく使う「柴胡(サイコ)」、漢方薬ではおなじみの「甘草(カンゾウ)」などの生薬が含まれています。

 釣藤鈎は、カギカズラという植物のうち、カギのようになっている部分を使うそうです。以前、漢方薬学科5年の学生らが本学の薬用植物園で学んだ際にも紹介されました。(写真下へ)

カギカズラ。よく見ると、カギのようになっている部分が確認できます。これが釣藤鈎に使われるそうです

 ところでうつ病やパニック障害などになった人は、脳内のセロトニン濃度が低下しています。釣藤鈎はセロトニンが全くない状態のときはセロトニンと同じような作用を示し、不安を打ち消したり、やる気を出してくれたりするそうです。

 脳内の神経細胞同士のやりとりに重要な役割を果たすグルタミン酸受容体の一種で、脳の働きに深く関係しているNMDA受容体と関連があり、脳内の神経伝達の調節に役立つ可能性も考えられており、この受容体をターゲットにした研究も進んでいるんだとか。

 釣藤鈎は重度のうつ病患者に対して「SSRIなどの抗うつ薬と一緒に用いると非常に高い効果を示すことが知られています。『天然物のアリピプラゾール』みたいな存在」と小川講師。ちなみにアリピプラゾール とは、ドーパミンの量を調節することで気分を安定させてくれる 抗精神病薬です。

 小川講師は抑肝散について「小児科用の薬の書物が初出。もともとは子ども用でした。子どもが夜泣きをするとお母さんたちが疲れてしまうので、治していきましょうという思いでつくられたのでは」と推測していました。