
医療研究者や教育者らを対象にしたセミナー「第一薬科大学 創薬・ヘルスケア・スタートアップ カンファレンス 2025」が22日、本学で開催されました。テーマは「革新的な医薬品開発と、それを支える人材育成の連携強化」。最先端のヘルスケア分野の知見と教育方法を共有し、未来の医療発展に貢献していくことが目的です。オンラインを含むハイブリッド形式で行われ、約70人が参加しました。
医療の高度化と高齢化によって医師や看護師、薬剤師らの人手不足が懸念されています。首都圏では次世代医療を担う人材を育成するプロジェクト「医療人2030」が行われており、その趣旨に共感した本学副学長の有馬英俊教授が、九州でも行おうと、今回のセミナーに盛り込みました。
セミナーは午前と午後の2部構成。第1部の特別セッション「医療人2030 in 福岡」では、「医療人2030」の提唱者である聖マリアンナ医科大学の小林泰之教授が、医療機関の倒産件数が過去最多を記録するなど医療現場の現状を語り、「このままでは日本の医療が崩壊してしまうという危機感がある」として、AI導入の必要性を訴えました。
続いて、医療AIに関する著書が多い学校法人原田学園の平原大助氏が、無料AIを使った業務効率化の実例を披露。AIが事実に基づかない情報をあたかも本当であるかのように生成してしまう「ハルシネーション」現象や、最新の生成AI「Gemini 3.0」が、コンピューターの画面を7割以上も理解できるようになったことなど、AIの課題と進化の両面にも触れました。
さらに起業家精神の育成を目指した「アントレプレナーシッププログラム」では、「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」シニアマネジャーの狩谷真治氏が「〝潜る〟状態でいながら、(世の中を変えられる)と思えば一気に出て、革新していくのが『スタートアップ』」と説明。その後、起業を考えている本学学生と対談。学生は目を輝かせながら、未来への思いを語りました。
第2部では国立がん研究センター研究所の濱田哲暢氏が患者腫瘍組織移植モデルを用いた創薬研究などについて講演しました。その後に行われた「スタートアップ企業による講演会」では、創薬・医療DXを牽引する株式会社4社が最先端の研究開発を紹介。「ガイアバイオメディシン」は、新規ナチュラルキラー様細胞を用いたがん免疫細胞療法の臨床開発、「StapleBio」は世界初の作用機序を持つ「Staple核酸」による次世代核酸医薬の創薬技術、「KAICO」はカイコを利用した独自のタンパク質生産プラットフォーム、「XaXaXa」は在宅ケア現場で使える支援アプリ「クルサ」など、医療・創薬・ヘルスケアの課題解決に直結する革新的な取り組みをそれぞれ説明し、医療DX・創薬DX分野における大学・企業連携の可能性を大きく示す内容となりました。
アンケートでは「有意義な時間が過ごせました」「刺激を受ける内容」「次回も楽しみにしています」などと、好評でした。
企画した有馬教授は「本学が担うAIやデータを活用した創薬、医療、ヘルスケア、コスメなどの領域への期待の高まりが示されました。本学薬学部と看護学部の教育・研究が社会に果たす役割を広く伝える機会となったと考えています。来年度も本学の特色を活かしつつ、地域と産学の連携をさらに強化する場として継続開催を目指したいと思います」と話していました。
